企業がクリエーターへの援助を惜しまない時代があった。
しかし日本の場合それは必ずしも日本に於ける文化事業を行っていたというよりは企業利益と紙一重の部分も多いにみられた。
別段それを責める訳ではないが、企業のメセナ的行動はバブルの崩壊と共に、より企業性が協調されたと思う。
1990年前半は、どうもハコ文化に捕われていたような感じがあって建物ばかりが増え、文化は人が作りそれを見た人が驚嘆して続く、という部分がどうも抜け落ちた時代に思える。
1995年以降この文化行為は一旦破綻したと思う。
仕事的にも殺伐としたモノが増えた。雑誌にしても言える事で気負いを感じる本は少なくなっていき読者への迎合が当たり前になってきていた。
そこから現在に至る訳だが、最近お客様側の取り組まれる姿勢が文化的に変わって来られた会社も有る。
文化姿勢が無くなりつつあった今だから「心のゆとりが求められる」と思う。一度何にも無い文化にならないと、心が求める文化の絶対性はわからない。だからいったん焼野原になるのはむしろ良かったのかもしれない。
現在日本では現代アートの人々の行き場が無く、アンディウォーホール、キースへリング、バスキアの規模で国民的英雄のクリエーターはまだまだ少ない。
アンディ達は当然才能に恵まれていたが、作品をというよりも個人の芸術家を心からバックアップした個人としてのパトロン達の事も絶対に忘れてはいけない。
バブル期の紙媒体は、専門職の私からみても「これは金の無駄」というモノもあった。しかし良し悪しを選別出来る程、企業プレゼンツの、企業商品とは全く関係のないコンセプトで、フリーの雑誌が多数出ていたという事も書いておきたい。
思い出すに10年程前に廃刊されたが、モスバーガーのフリーペーパー。こちらは店頭置きでクラフト作家の方のオブジェ紹介や写真。
モリサワの「縦組横組」。実は級数書体ブックの役割も果たしていて中の記事は「何の書体で、何級で」と示されているのだが、一見とするとスタジオボイス的な作りでデザインも文字中心の革新的な試みが多くされていて、デザイン的に本当に良く出来ていた。
エッソだったか、江口寿史さん監修の漫画本「A-ha」も数多い漫画家が賛同し試みが面白かった。以上全て無料配布だった。
また、世の中にこんな本達が出回り出す事を楽しみにしたい。