プロダクションデザインってのは、映画でよく聞く言葉。
ご存じない方も多いですが、私たちの世界では、こういうモノの企画に入る事も有る訳で。
で、一体何なのか?ってことですが、プロダクションデザインというのは、監督の考え方によってその位置づけは大分変わるが、ハリウッド映画で位置づけを簡単に言えば、「映画のセットを作る」ことになるのかも。
アメリカでは、美術監督や美術とはいわず、プロダクションデザイナーと呼び、時代考証における、装飾、大道具、小道具、ファッションに至るまで、全体の美術プランを作ることになるかな。
高度なモノでいうと、ストーリに関係する全ての俳優達の性格付けで、かなりデザインも変わる場合も。
「トムクルーズが演じるOO7映画」と「ジョージクルーニーが演じるOO7映画」など、役者主導の映画の場合では、誰が演じるかで全くデザインの想定も変わってくるのが、このデザインのこだわりでしょうね。
基本は「登場する演技者の趣味思考を考える」ということ。
「住みそうな家」「使いそうなモノ」、好きな「絵」、好きな「メーカー」など、大道具、小道具などにも渡り、心理分析にも近いような事柄も出て来る訳で、映画のトーンや、キーワード色の配色に気を使うのはこの方々なんですね。
私がこの世界にハマったキッカケの映画が、「ブルー インザ フェイス」というハーヴェイ・カーテルが主演する映画。
ニューヨークのダウンタウンに位置する、タバコ屋の主人の部屋の中。
木のテーブルの上の、「しみ込んだ、コップの跡のまあるいシミ」に、カレンダーに書かれた「at last(ついに)」の文字。降り積もったホコリなどなど。そのホコリを利用した光の演出など、タバコをくゆらす為に作られた部屋に、とても感動してから。
その部屋を見ただけで、ハーヴェイが出て来なくても、彼がどんな人生を歩んで来たかがとても分かる。それも相当な重さで。
彼が落ち込んでいれば、服もクタクタになってぶら下がっているし、彼が楽しんでいれば、バーボンのミニボトルが置かれていたり、場面設定にもかなりの入れ込みよう。
とても素晴らしいデザイナーだなと思うのですが、これ以来、かなりこの点を重視して映画を見るようになった。
「OO7」シリーズや、「インディアナジョーンズ」なんかが、「キャラクター付け」や「色付け」がはっきりしていて、プロダクションデザインの入り口としては面白いかな。
別の見方で「グリーンディスティニー」や「コックと泥棒とその妻の愛人」というような、衣装からの色の影響が深いモノもたくさん有るので本当に奥が深い。
これは私だけの映画の楽しみ方。
私がミニシアターが好きなのは、この「こだわり」が深い秀作がたくさん有るから。
カンヌ映画祭はいい例で、ラインナップは、金を掛けなくてもプロダクションデザインが優れていると、映画はこれだけ面白いんだ、というのを体感させてくれます。
ストーリよりも時には面白かったりする、この「デザイナーのこだわり」がたまらんのですね。
因に何度も登場するワシの好きな映画「プリシラ」のプロダクションデザインも、本当に逸品ですよ。