100本コンテンツに戻る  Pick Up Movie Back Number 04.11.14発行

まぼろしの市街戦

1967年(イタリア・フランス)
◎監督 フィリップ・ド・ブロカ
◎出演 アラン・ベイツ ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド他
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※文章は、映画内容が一部ネタバレです

 フィリップ・ド・ブロカの傑作、名作です。フリークスの方々がかなりでています。この映画を知ってる人はいませんか?観たという話を滅多と聞きません。見た人は生涯忘れられない映画になると思いますのでご注目。ブリキの太鼓のようなゴシック系ではないのですが、映像色はゴダール風、現代の映画の雰囲気的にはジャン=ピエール・ジュネ風かなぁ、う〜ん。

 話は外界の人たちを避けて来た人々の街が(精神病患者が集った街)、傍若無人に正当ぶった馬鹿な軍隊に侵略されようとしていて、最初はおかまいなしの彼らも結果的に皆で戦うんですが、そこに問題が起きて、、、てな感じです。バレリーナのかっこうしたジュヌヴィエーヴ・ビジョルドの美しいこと、スタイルが良いわけではないのですが、悲しいほど美しい、、、一見の価値はありますよ。

 普通だと思っていた人間の狂気と、普通でないと思われている人達の純粋さをアナタはどう見るのでしょうか?この映画のテーマにもなっていますが、事実を全て知ってしまうより、狂っている方が幸せってこともあるという事実に呆然としてしまうんですよね。

 まずは見るべきですがレンタルしてる所残ってるのかな。(先日私はDVDを入手しました!)。遙か昔映画館で見たときは「幻の市街戦」のタイトルは漢字のように思ってたのですが、なんとひらがなだったのですね。そしてモノクロームだったと思い込んでいた私、思い出って色あせるのね。

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100本コンテンツに戻る  .Pick Up Movie Back Number 04.12.17発行

蜘蛛女のキス

KISS OF THE SPIDER WOMAN
上映時間119 分 1985年ブラジル/アメリカ
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監督:
ヘクトール・バベンコ 
出演:
ウィリアム・ハート ラウル・ジュリア ソニア・ブラガ ホセ・リュウゴイ
ヌーノ・レアル・マイア デニス・デュモント

製作: デヴィッド・ワイズマン
原作: マヌエル・プイグ
脚本: レナード・シュレイダー
撮影: ロドルフォ・サヴチェス
音楽: ジョン・ネシュリング

「蜘蛛女」ではありませんので誤解のないように。色々映画を見てきた中で一番好きです、生涯変わらないでしょう。ビデオでは、すでに20回以上観てしまいまして。原作が先に売れた作品で、日本では何度も舞台化されていますが、映画の方は展開の面で進んでいるというか、ストーリーの解釈自体が異なっていると思います(舞台もいいですよ)。この映画は著作権問題があるのか、DVDを発売しているのでしょうか?見たことがありません。

 同じ牢屋に入ったゲイと政治犯の話なんですが、、、ともかく牢屋というどうにもならない状況がわたし好きなんです。私の大好きな1場所ものですね。

 南米のとある刑務所で同じ監房に入れられている対照的な二人の男、体制に反旗を翻し運動した結果捕まったバレンティンと、未成年少年へのわいせつ罪で捕まった、ホモセクシャルのモリーナ。最初はモリーナというか、ゲイそのものを嫌うバレンティンなのですが、モリーナは構わず自分の自作の映画の話を話し始めます。

 それにつれてバレンティンは、自分の自由への解放を潜在的に願うためか、元の恋人を幻想上の美女に見立てたかのような夢を見始めます。やがて一夜だけ二人は絆を深めるのですが、相手を思いやって 与えるというのは、与える方も与えられる方も意味のある一夜ですね。

 この後バレンティンは自分は保釈されずに国に秘密裏に殺されると感じ、自分の一つの願いを、保釈されるモリーナに託すのですが…。あ〜〜思い出しても放心してしまいます。

 この映画には「バレンティンの夢」と「モリーナの映画」のシーンが盛り込まれ、3つの世界観が唐突に盛り込まれます、これが終幕に近ずくにつれて3人の俳優の感情にリンクしていくんですが、めちゃくちゃ絶妙です!

 引き込まれ引き込まれ、気付くと涙が流れていたという放心状態で、終わっても長い間、映画館の座席に座り込んでいました。

 余談ですが、ジェニファー・ロペス出演の「ザ・セル」の夢の世界観は「蜘蛛女のキス」の「バレンティンの夢の中の蜘蛛女」のシーンに影響されているのでは?と考えてしまいましたが、どうでしょう?この映画はこの後の監督さん達にかなり影響があったのではないかと思うのですが。

 ホモセクシャルの青年役を、バート・ランカスターが病気のために降板後抜擢されたウィリアム・ハートが。彼はこの映画でアカデミー主演男優賞をはじめカンヌなど各国の賞を総なめにし、ウィリアムは役者としても地位を確固たるモノにしたように思います。ホモセクシュアルについても随分見方を変えた作品でしたし、人が人を愛すると言うことを、しっかりと演じていらっしゃいました。私もこの映画以来、中学校から好きな役者さんです。

 またバレンティン役にはラウル・ジュリアが出演、95年にくも膜下出血で急死されたときは本当に驚きましたし、落ち込みました。「アダムス・ファミリー」に出演したときも、コメディのイメージが無かったのと「蜘蛛女〜」へののめり込み方が尋常でなかった私は、ちょっとショックでしたが。彼の伏し目がちの目が好きでしたね〜。

 蜘蛛女とモリーナが語る映画の中の女性歌手、そしてバレンティンの恋人をソニア・ブラガが一人三役で。この方は素晴らしいの一言、こんな妖艶で悲しげな女優さんは、なかなかおりませんぞっ。

 ゲイを主役にしている映画はよく見ますし、好きな方です。ゲイものでいうと、「プリシア」「モーリス」!がすきですね「プリシラ」に関しては次回書こうかな(予定は未定)。「ブエノスアイレス」ちょっと駄目、寂しすぎるんだもんなぁ。香港でのゲイの解釈としてはおもしろい。これ出てたのアンディラウでしたっけ?



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ダウンバイロー(Down by law)
1986年(フランス)
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◎監督 ジム・ジャームッシュ
◎出演 トム・ウェイツ ジョン・ルーリー ロバート・ベニーニ
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※文章は、映画内容が一部ネタバレです

. わたしはジム・ジャームッシュの映画の世界観が大好きなんですが、特にこのモノクロームの「ダウンバイロー」がピカいちです。

 私の好きな映画そのままの展開で、一場所に集めさせられた、犯罪者たち。牢屋モノ・限定空間、素晴らしい! 一場所モノの最高峰映画「蜘蛛女のキス」の次に好きですね。 この映画、牢屋で一緒になった全く気の合わない3人の男の話なんですが、結局三人で画策して脱獄するんですね、紆余曲折してその後は別々に人生を歩むんですけど、三人の配役の素晴らしいこと。

 わたしはトムウェイツ大好きで、この人出てれば「ドラキュラ」でも何でもいいです、トムウェイツの歌聞くと中学校生活を思い出すんですよねぇ。 しかし役者としても かなりの腕ですよね。

 そして今回残酷な役所ですけど、ジョンルーリーもシブイ! 映画中盤で、三人だけの親愛みたいなものを感じ始めるシーンがあるんですが、いつも反抗的なくせに「仲間は置いていけない」的な仕草を、ジョンルーリーが見せるんですよね、このシーンは本当にジーンときます。

 ロバートベニーニは今や「マイビューティフルライフ」で知れた方ですが、ジムはこの役者さんが大好きみたいですね、 「ナイトオンザプラネット」にもでていますし、その頃からいい味の役者さんだなぁと、この頃から私は目をつけていました(笑 ただし「ピノキオ」は頂けませんでしたが)。 完全にネタバレですが、ラストシーンで、ジョンルーリーとトムウェイツが分かれ道で手を挙げて別れるシーンは、本当に心に残ります。

 こんなに脳裏に焼き付いたラストはなかなか無くって未だに夢で見るというか。ミニシアターで見終わった後、ボーと「この三人はこの先どうなったのだろう」と、想いを巡らせた覚えがあります。
 観た人にしかわかりませんが、観たら当分は「アイスクリーム♪アイスクリーム♪」と叫びながら、辺りを飛び跳ねたくなりますね(笑)。
 この監督の作品は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」で、観客と評論家に喧嘩を売ったと賛否両論の嵐だったのですが、私は一時間たってもストーリーが、あまり進まないような映画は全然嫌じゃないので、私的には面白くて良かったのですが、「ナイト・オンザ・プラネット」、「ミステリー・トレイン」までいくと、どうも昔の良さがなくなってしまいましたね。 なにか映画自体がアカデミックになりすぎたとゆうか、、本来のひたすら もの悲しさを追うという部分がなくなってしまったような。おそらくストイックじゃ無くなったんですが、昔のような作品のような悲哀のあるものが観たいなと思いますね。

DVDボックスはかなり前に発売されたモノで、今は絶版です、別のデザインで発売されていますのでご注意を。(わたしはこのDVDのデザインが気に入っているので、買っといてよかったって感じです)



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コックと泥棒、その妻と愛人
THE COOK, THE THIEF,HIS WIFE & HER LOVER
上映時間124 分 1989 イギリス/フランス
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監督:ピーター・グリーナウェイ 
出演
リシャール・ボーランジェ マイケル・ガンボン ヘレン・ミレン
アラン・ハワード ティム・ロス
 
製作:キース・カサンダー  脚本:ピーター・グリーナウェイ
撮影:サッシャ・ヴィエルニ 音楽:マイケル・ナイマン
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※文章は、映画内容が一部ネタバレです

 カルト映像作家として認知されることの多いピーター・グリーナウェイの代表作なんですが、どの映画もこの監督の作品のとすぐわかる映像美で、どの作品にも死体が必ず出てくる、択一した気持ち悪さの芸術家ですな。この時期に映画を乱打した後ぷっつりといなくなったが、わたしゃ、映画作りで精神的に病んでしまったのではと推測したくもなった。

 この作品では、特に映像美が圧巻で、ゴルチェの衣裳デザインもさることながら、照明やセットが、役者の心理描写に伴い変化し、食欲・性欲・名誉欲の醜さを映像で表現するといったところなどはアート作品と称した方がいいかも知れない。

 わたしゃこの人の作品の「数におぼれて」「ZOO」「プロスペローの本」など好きなのだが。「プロスペローの本」はじめ脚本はともかく、この監督の美術的なシチュエーションの考え方は大好き。熱狂的ファンが多い分、生理的にこの監督が嫌いっていう人にはよく会いますよね。「数におぼれて」「ZOO」も気色悪さは逸品。私の中で「ZOO」は、寺山修司作品に並びトラウマになったベスト10に入る作品だが、決して悪い映画ではない。「数におぼれて」は1〜100までの数字が何らかの形で順番に出てきます。看板であったり、台詞であったり、洋服の3個目のボタンが掛け違いであったり、熱中しますよ。パンフには答えが載ってるんですが、私はわかるまで3回見て制覇しました。

 さて内容ですが、とんでもない金持ち達が集まる高級フランス料理店「ル・オランデーズ」の中で起きる、10日間の人間模様を描いていくもの。「ル・オランデーズ」の一番の客、泥棒のアルバートとその美しい妻ジョージーナ達。自分の社会的ステータスを人に認めさせたいが為にアルバートは盗んだ金で贅沢三昧し、何時も乱行を働く傍若無人ぶり。ジョージーナはそんな夫の卑しさにうんざりしながらも彼の残忍な性格を知り抜いており、恐ろしさの余り逃げだす事も出来ずにいた。しかしやがて彼女はマイケルという学者の客と恋に落ちてしまい、それを知った旦那が嫉妬のあまり怒り狂い恐ろしい悪行三昧、、、最後にジョージーナがした行動とは、、、あー恐ろしい恐ろしい。

 ジョージーナを演じたヘレン・ミレンの退廃的な美しさはこの作品にぴったりで、主人が恐ろしくても、どうしても恋に落ちていく様がなんとも苦しくて、最後のラストのエンディングの悲しさに繋がります。グリーナウェイ作品ではマイケル・ナイマンの音楽が欠かせない演出効果なのだが、子供のソプラノボイスなど精神的に病みそうな音楽の数々は、圧巻の素晴らしさである。そして、驚きはティム・ロスが泥棒一味の子分役で出ているのだが、気付くと「おー」と声を上げてしまうほどの若々しさであるぞ。



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スモーク smoke 1995/米/日本/113 分
監督:ウェイン・ワン 
原作脚本:ポール・オースター 
撮影:アダム・ホレンダー 
音楽:レイチェル・ポートマン
出演:ハーヴェイ・カイテル 
ウィリアム・ハート 
アシュレイ・ジャッド
ブルー インザ フェイス
Blue in the face 1995/85分/米  
監督:ポール・オースター 、ウェイン・ワン
音楽:デヴィッド・バーン
出演:ハーヴェイ・カイテル
ミラ・ソルヴィノ
ジャレッド・ハリス ゲスト多数
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※文章は、映画内容が一部ネタバレです
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 ブルックリンがテーマになっているこの映画、スモークというだけに煙草屋での日常を描いたモノなのですが。小説家のポール・オースターの短編集「スモーク」から生まれたモノ。私は本も台本も、先に読んでいたので映画はおもしろくないんじゃないかって思いましたけど、なんのなんの。シンプルな映像がとても良かったです。
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 煙草屋の主人オーギー(ハーヴェイ・カイテル)は、14年間毎日、定時刻定場所で写真を撮り続けていて、アルバムにしているんです。そしてその店の常連で、小説が書けなくなった小説家のポール(ウィリアム・ハート)、彼が助けた黒人少年ラシード、この三人が映画のキーポイント。
 お嫁さんが亡くなって立ち直れないポールも、ラシードとの交友で徐々に自分自身を取り戻すんですよね。悲しみを閉じこめている演技が、ウィリアムにはぴったりで、押しの弱さも人間的な優しさも、とても心を暖かくさせます。
 この後、たんたんとシンプルにストーリーは続くんですけど、クリスマスに起こる、オーギーと黒人のおばあさんの、「大人版クリスマスキャロル」ともいうような、或る事が最大のクライマックスでしょうか。
 実は私、ハーベイは嘘臭い演技が、あまり好きじゃないですよね。
 彼はどんな役でも優しく演じない。突き放す演技というか、素っ気ないというか。そこが、彼の良さなんでしょうね。今回は嘘が一杯の都会の片隅で暮らすしがない男の匂いがとてもして、映画に合ってましたね。
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 人間、嘘を付かない人はいない。、嘘をつく浅ましさ、それを言わない優しさ。なんだか、煙草を燻らしながら話したい話しですね。そういう事は口にださなくていいんだよ、みたいな暗黙の了解で、物語は終演していくのですが、考えてしまうんですよね。で、この頭のモヤモヤのところに、私の大好きなトムウェイツの曲が流れるんですよ。このコトワザめいた最後のシーンを、意味ありげに歌ってあるのですが、これ感動です。実際に観て泣いてください。
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 都会だけどブルックリンってのが、この映画のミソですね。この場所でしか出ない、大人の映画だと思います。
 プロダクションデザインをはじめ、小道具が圧巻です。おそらく意図的に「つけた」と思うんですが、机の上に付いたコップをおいた跡のまあるいシミ、これが都会の雑踏を表している気がして、すごいなぁって感心しました。 
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 「ブルー・インザ・フェイス」は「スモーク」の続編というより、かなりストーリーをカットして前作よりも写真的。
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 「心に本当の目がある」。この言葉が印象的でしたが、嘘じゃない、いい言葉だと思います。
ゲストに、ルー・リードとかジム・ジャームッシュ・マドンナがオールアドリブで出演しているのが大笑いですが、これに力が入りすぎで、ちょっとストーリーに自然さがなくなった感もあります。
 
 オギーの煙草屋がなくなるかもしれないという話が持ち上がる。そこでこの最愛の店を救うべく、皆が奮闘するって感じで、「スモーク」のボーナストラックだと私は理解しております。
 


100本コンテンツに戻る   Pick Up Movie Back Number 05.5.12発行.

未来世紀ブラジル Brazil
1985 英・米               

監督:脚本:テリー・ギリアム
脚本:トム・ストッパード チャールズ・マッケオン
撮影:ロジャー・プラット
音楽:マイケル・ケイメン

出演:ジョナサン・プライス/ロバート・デ・ニーロ/イアン・ホルム

/キム・グレイスト/キャサリン・ヘルモンド/ボブ・ホスキンズ

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※文章は、映画内容が一部ネタバレです

 「未来世紀ブラジル BRAZIL」は、1986 年アカデミー脚本賞&美術賞にノミネートされた鬼才テリー・ギリアム監督・脚本作品。

 「バロン」「12モンキーズ」も、そうなのですが、この人の映像感は、誰かの夢を覗いているようで、現実感がないのに、あるような息の詰まった感覚にさせてくれる作品が多いなぁ。

 ホント、この映画が好きな方多いですよね、よく話題に上ります。多分誰にでも、この人の映画に出てくる登場人物の、冷や汗をかくような、だけど誰にも言えないんだけどってな、近しき心理描写に覚えがあるんですよね。

 『 BRAZIL 』という題名から、国のブラジルに関連していると思いがちですが、これは最後に主人公が口ずさむ曲「ブラジル」の事。邦題の「未来世紀」はいらないでしょう。このタイトルを最初見たとき、まじで見る気しませんでしたモノ。日本語タイトルはせめてサブタイトルに落とすぐらいで、そろそろ日本もそのままの映画名で上映するようにして欲しいですね。

 ある未来都市の情報省。管理化された社会に、嫌気がさしている或る男が巻き込まれる奇妙な事件。奇妙な映像が繰り返し出てきて、訳がわかりませんが、ストーリーも説明せよと言われても、これは難しい。説明したら非常に嘘臭いので、したくないって事もあるでしょうか。

 退屈な世の中から飛び出して、夢に満ちあふれる世界に飛んでいけると信じていたのに、的な精神的残酷映画ですかね、終わったら、「ボー」って頭の中で、ずっと音がなるような。実際「ブラジル」の歌がずっと頭の中で巡ってましたし。なんだか最後のシーンは、いっとき噂に流れた、ドラエモンの悲しい最終話を思い出すのは私だけか?

 またビルのセットがいいですよね。チャップリンの映画のセットみたいで。あと、人がゴミゴミいる、舞台を思わせるような排他的な群衆のシュチュエーションも素晴らしい。アレ観てるとすごく精神的に抑圧される。

 役者さんも、地味に選んでいるところがいいし、ロバートデニーロって主役級が脇役ってのも素晴らしいです。

 「時計仕掛けのオレンジ」にも、ちょっと似ていますが、キューブリックとこの人、考え方似てるかな??精神的な暴力への訴え方がなにか似ているような気がするんですがね。

 美術や衣裳や、時代考証なんかは「ブラジル」を手本にした映画がめちゃくちゃあると思いますよね。

 わたし、主人公のサムが夢の中で、翼を広げている飛んでいるシーンで、必ず寝てしまうんですわ。あのあとのカブト姿のサムライ、黒沢映画へのオマージュだと本人は言ってますが、なんですけど、、、オマージュってのは「ああ、本当だ」ぐらいが適当なのに、モロそのまんまで怪獣状態で登場するので、笑けます。

 ギリアムは【体制に管理されている人達が、夢に逃避することは「人間の性」】ってことを描きたかったらしいのですが、当時の映画製作会社のユニバーサルが、作り直すように何度も命じて、ラストシーンはハッピーエンドとなるバージョンも作られたんですよね。

 この映画がハッピーエンドなんて、そんなコトしたら何の意味もなくなる訳ですわ、ハリウッドって怖い所だなぁ。まぁそこで「そんなものはオレの映画じゃない」とギリアムの必死の抵抗で、現在のバージョンで上映にこぎ着けたのですが。この人、制作過程にはいつも困難が待ち受けてるみたいで、「それはアナタのせい、それとも祟られてる?」って聞いてみたいなぁ。

 類似で「ジョー月の島に行く」トムハンクス主演で非常に「未来世紀〜」に似てますっていうか、リメイクではないんですが、確実にオマージュにしてるんでしょうな。



100本コンテンツに戻る   Pick Up Movie Back Number 05.3.30発行.

デリカテッセン 
Dlicatessen
1991年 フランス 100分
監督 ジャン=ピエール・ジュネ 、
マルク・キャロ
脚本 ジャン=ピエール・ジュネ
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アメリ 
Amelie
2001年 フランス 120分
監督 ジャン=ピエール・ジュネ
脚本 ジャン=ピエール・ジュネ 、
ギョーム・ローラン
音楽 ヤン・ティルセン
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※文章は、映画内容が一部ネタバレです
出演
ドミニク・ピノン 、
マリー=ロール・ドゥーニャ 、
ジャン=クロード・ドレフュス 、
カリン・ヴィアール 、
ティッキー・オルガド
出演
オドレイ・トトゥ 、
マチュー・カソヴィッツ 、
ヨランド・モロー 、
ジャメル・ドゥブーズ 、
イザベル・ナンティ
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 「デリカテッセン」は、 「ロスト・チルドレン」 「エイリアン4」「アメリ」「ロングエンゲージメント」でおなじみのジャン=ピエール・ジュネ監督の長編デビュー作。
 ミニシアターには色々と秀作がありますが、この方は正にミニシアターの旗手。アナタのためだけに作りました的な、何と言えばいいか難しいですが、摩訶不思議な世界観なのに、何故か暖かいというような作品が多いです。
 多分お金のために「エイリアン」は受けたのでしょうが、ジュネは本館上映の大型作品では絶対に良いモノが作れないような気がするなぁ。「ロングエンゲージメント」の映画評はあまり良くなかったですが、これも大型映画館用の作品では無かったと思うんですよね。きっとミニシアターなら大ヒットだったのにもったいない話です。
 この人の最近の話題は「ハリーポッター4」の監督を本も見ずに断ったとして有名ですね。ほんと自分の作品に関しては完璧主義者で、DVD特典の監督インタビューも長い長い、うるさいほど喋る。
 確かにこの人には、既に世界観が完成されてしまっているハリーポッターには魅力が無いでしょうね。
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 摩訶不思議な独特な世界観はテリーギリアムにも通じるモノが有って、実際に「フランスのテリーギリアム」と言われていたかも。「アメリ」からはどか〜んと女性ファンも増えてしまい、ちょっと私はガッカリしましたが、確かに「アメリ」は秀作。普段ロマンティックコメディを見なかった人達も、この映画で好きな映画のカテゴリーを増やしたんじゃないでしょうかね。
 この監督はジムジャームッシュ同様、気に入った俳優はずっと使う傾向が有り、デリカテッセンで主役のドミニク・ピノンはどの映画にも出演されています。
 オドレイ・トトワにしてもハマっていましたが、最初「アメリ」はアメリカ人を使用するアメリカが舞台の作品構想だったなんて信じられない、確かアメリカ名でタイトルも用意されていたそうですね。
しかしあれほどの際物作品にでると、この後の彼女の女優生命心配ですよね。
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 核戦争の15年後のパリ郊外。焼け残った精肉店。草も木も生えず、食べ物のないはずの近未来の精肉店。ってのが「デリカテッセン」のメインシュチュエーションなんですが、この肉屋が大家になってアパートメントを貸し出しているんですよね、そこに貧乏大道芸人君が住むんですが、どうもおかしい。ここの精肉店の肉って何の肉?って感じで。
 ストーリーだけ聞くとオドロオドロしいですが、全くその様子は無くむしろ小気味良いリズム感で進むロマンティックコメディに近いかも。観た後に何とも言えないポカポカ感があります。
 
 「アメリ」の方はというと、子供の時から空想好きのアメリ。あることを切っ掛けに、他人にたのしい悪戯を仕掛け、人知れずお節介を焼いて回っているのですが、ある日アメリはある男性に恋してしまいます。
 人生の素晴らしさと、恋する勇気を盛り込みながら、まさに「ケ〜セラセラ〜♪、どうにでも〜なる〜♪」で映画はすすんでいきます。
 この方の全ての作品に言えますが、カメラワークが完璧主義を物語っているぐらいアートな作品。恐らくは美術関連に妥協がなく相当苦労して作り混まれているのだと推測されます。現代物でも、決して今風には落とさない美術や衣裳は彼の美意識の高さが伺えますよね。
 ジャン=ピエール・ジュネの映画は特にストーリーが逸品。「アメリ」もホントよく出来ているなぁが観た時の感想ですね。当初映画配給会社アルバトロスの方がホラーだと勘違いして買い付けたら、ミニシアターの興行成績1位に輝く嬉しい誤算だったと有名な話がありましたよね。
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 この監督の作品を観る前はいつもそうですが、「こんどはどんな摩訶不思議だろうと」とこんなにワクワクする事は貴重、次はどんなだかねぇ。
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バベットの晩餐会 
Babette's Feast Babettes Goestebud
1991年 フランス 100分
監督:ガブリエル・アクセル
製作:ボー・クリステンセン
製作総指揮:ユスツ・ベツァー
原作:アイザック・ディネーセン
脚本:ガブリエル・アクセル
音楽:ペア・ヌアゴー
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※文章は、映画内容が一部ネタバレです
出演
ステファーヌ・オードラン
ジャン・フィリップ・ラフォン
グドマール・ヴィーヴェソン
ヤール・キューレ
ハンネ・ステンスゴー
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 88年度アカデミー外国語映画受賞作した作品で、アイザック・ディネーセンの小説の映画化。監督・脚本は「性歴2000年」のガブリエル・アクセル。この監督はきっとこの原作を読んで「この映画を作りたい!」と感じたに違いないと私は思います。
 とりたてて派手な趣向は一切無い映画なんですが、この映画を観た時に「秀作!」と叫ぶと共に「ああ、人間ていいなぁ」って思ったんですよね、美味しいという感覚を考えられる人間て幸せだって。
 時に、旨いと感じるモノはグロテスク事なのかもしれないと人間の生理についてまでも考えてしまうのですが、プライドを持ってして人に接するその礼儀や素晴らしさを極自然に味あわせてくれました。
 ほぼあらすじ書きますのでこれから観る人は読まない方が絶対にいいです(笑)
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 19世紀後半のデンマークを舞台に、質素な生活を送っている敬虔なプロテスタントの村人たちと、フランスからやってきたひとりの女性との出会いがこの物語のメイン。
 マーチーネとフィリパという二人のおばあちゃん姉妹の所に、フランスで家族を無くして亡命してきたバベットという女性が、おばあちゃん姉妹の父の繋がりで紹介されてきて無給でよいから家で働かせてほしいという申し出をするんですね。彼女の身元は分らないし謎だらけなのに、姉妹は彼女を信じて家政婦として彼女を家に置く事に決めるんです。
 ここで最初に私は溜め息をつきましたよね、人を信じる事に「なにかしらの訳などない」という事もジーンときたシーンでしたね。
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 その後、寂れる町にあって、姉妹は村を盛り立てようと亡き神父の実の父親の生誕100周年パーティを行おうじゃないかとするわけです。
 そんな時バベットのフランスで買っていた宝くじが一万フラン当たっていたと分り、そこでバベットは14年何も聞かずに家に置いてくれた姉妹の為に、その100周年の晩餐会で自分にフランス料理を作らせてほしいと頼むんですね。
 姉妹は彼女の初めての頼みを聞いてやることにするが、数日後、彼女が運んできた、ウミガメやウズラなんかなどの料理の材料の贅沢さに、質素な生活を旨としてきた姉妹は頭を抱えてしまうんです。
 この描写もわざとグロテスクに見えるように撮影していて、この監督の「実は人間て食物連鎖で最強なのよ、実はこうなのよ、現実を見なさい」っていう内面の部分を表しているようで「やられたー」って思うんですよね
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 で、晩餐会の夜、20年前程に姉妹に求婚していたローレンスも、なんと将軍となって現れるんです。最初は呼ばれた村人達も食べた事も無い、フランス料理を前にカッチンコッチンなんですが、次第にその美味しさに心も溶かされていくように安堵していく訳ですね。
 実はバベットは、有名な「カフェ・アングレ」の女性シェフだったのですが、誰にもこの事を言わなかったんですが、将軍ローレンスはその贅沢なレシピで、すぐにそこのレストランのレシピだと分り、姉妹にその事を言う訳です。姉妹達はそんなすごい立場にいたバベットがその事をひと言も言わずに14年間家政婦として従事して暮らしてきた事に、その奥ゆかしさや思いやりに涙するんですよね。
 そして晩餐の後、宝くじに当たった金で故郷へ帰るものと思っていたバベットが、この晩餐に一万フラン費やしまったと聞き、今後もこの地に留まりたいというのですね。
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 バベット役のステファーヌ・オードランの何も言わずに目で芝居するのが、これがまた素晴らしいんですが、やはりこの二人のおばあちゃんのにじみ出るあったかい演技には、派手に生きなくても人生って良いものなんだと教えてくれたように思います。
 「こういうのがもっと観たい!」と叫びたくなるような映画ですよ。

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